iPS 細胞研究所(CiRA =サイラ)は、平成22 年4 月にiPS 細胞の基礎研究から臨床研究までをシームレスに推進するために設立されました。現在、未来生命科学開拓部門、増殖分化機構研究部門、臨床応用研究部門、基盤技術研究部門、上廣倫理研究部門の5つの研究部門に分かれ、iPS 細胞技術を創薬や再生医療に応用することを目指した研究に取り組んでいます。また、iPS 細胞に関連する倫理的、社会的、法的課題の解決に向けた研究および対処法の実践を進めています。世界最高水準のiPS 細胞研究拠点として機能し、幹細胞分野をはじめとする学理の探求に貢献するとともに、若手研究者の育成にも努めます。
CiRAは、下記の2030年までの長期目標を掲げ、iPS細胞技術の医学応用を実現すべく研究活動に取り組んでいます。
<CiRA 2030年までの目標>
2023年度は、AMED再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラムが始まり、CiRAは本プログラムにおいて中核拠点として採択されました。CiRAが代表機関で、自治医科大学、国立成育医療研究センター、京都大学iPS細胞研究財団が分担機関となります。再生・細胞医療および遺伝子治療の実用化、融合研究を目指します。
主な研究成果としては、長船健二教授のグループが、iPS細胞から常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の病態モデルの作製に成功し、そのモデルを使って治療薬候補を発見したことを発表しました。その研究成果をもとに、京大発スタートアップ企業のリジェネフロ社が治療薬の候補であるタミバロテンを開発品として選定し、ADPKD患者さんを対象とした前期第二相臨床試験を、順天堂大学などで開始しました。
また、髙島康弘准教授のグループが、ナイーブ型ヒト多能性幹細胞(発生の初期段階の細胞に近いヒトES/iPS細胞)を用いてヒト初期発生を再現することに成功しました。ヒト発生の詳細な理解を深めるとともに、より自然な発生過程を再現することでヒトES/iPS細胞から組織や臓器を誘導する新たな手法の開発につながることが期待されます。
今後も、患者さんに一日でも早くiPS細胞技術を届けるという強い信念を持って、研究活動に邁進してまいります。
iPS細胞は、今後の医療に大きな影響を与え、誰もがその恩恵をうける可能性のある新しい技術です。そのため、より多くの方々に研究活動について理解していただけるように、ニュースレター、シンポジウム、サイエンス・カフェ、ウェブサイト、SNS等、各種媒体を活用したコミュニケーションに努めています。研究者に向けては、国内外から研究者を招聘し、セミナーを開き研究促進のための意見交換を積極的に行なっています。
2023年度には、例えば、9月には一般の方向けに倉敷中央病院と共催シンポジウム「最先端科学を社会実装する ~倉敷で考える医療の未来~」を、岡山県倉敷市にて開催しました。また、11月には、宮崎県立宮崎西高等学校との共催で、宮崎市で高校生・大学生向けのシンポジウムを開催しました。
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