ウイルス・再生医科学研究所は、2022年4月に「医生物学研究所」へ名称を変更しました。
2016年10月、ウイルス研究所と再生医科学研究所は、異分野融合/学際研究を促進し新たな学問領域を開拓するという目的で統合され、ウイルス・再生医科学研究所が発足しました。新研究所名については、当時は両研究所名をそのまま並べるという形を取りましたが、その後も研究所内で議論は続き、今回の改称に至りました。新名称には、「生物学」という原点を大事にしようという思いが込められています。
本研究所は「ウイルス感染症・生命科学先端融合的共同研究拠点」と「再生医学・再生医療の先端融合的共同研究拠点」として研究者の活動支援を行ってきましたが、改称と時を同じくして両拠点を統合し、2022年4月に「ウイルス・幹細胞システム医生物学共同研究拠点」という新拠点を発足させました。
膜内切断プロテアーゼは、本来は疎水的環境である細胞膜の内部でタンパク質の加水分解反応を行うというユニークな酵素です。この酵素は細菌からヒトまでさまざまな生物種が持っており、重要な生体プロセスの制御に関わっています。秋山研究グループは、細菌の持つ膜内切断プロテアーゼであるRsePを対象としてクライオ電子顕微鏡単粒子解析やネイティブ質量分析、部位特異的in vivo光架橋実験等に取り組み、RsePの内部に取り込まれた基質タンパク質が、ヘッドロックのようにしっかりと固定され、引き伸ばされた状態で切断されることを明らかにしました(Asahi et al., 2025, Sci. Adv. 11, eadu0925)。基質結合様式や切断機構をさらに詳しく調べていくことで、将来的には、病原菌の感染や増殖を抑えるような感染症治療薬や予防薬の開発につながることが期待されます。
エボラウイルスのヌクレオカプシドは、ウイルスゲノムと複数のタンパク質からなる螺旋状複合体で、転写・複製やウイルス粒子の形成に不可欠です。しかし、構成タンパク質(NP、VP24、VP35)がどのように集合して複合体構造を形成するのかは不明でした。野田研究室はクライオ電子顕微鏡法により、ヌクレオカプシドの高分解能構造の決定に成功しました(Fujita-Fujiharu and Hu et al., 2025, Nat Commun. 16(1):2171)。
その構造から、2分子のVP24が異なる位置で2分子のNPに結合する独特な様式を発見しました。さらに、VP24の変異体解析により、各VP24がウイルスゲノムの合成やヌクレオカプシドの細胞内輸送など、増殖過程の異なる段階を調節する「分子スイッチ」として機能することが明らかにしました。本成果は、エボラウイルスの増殖機構の理解を飛躍的に進め、今後の新たな治療法の開発にも貢献することが期待されます。
医生物学研究所では、教育・啓発活動にも積極的に取り組んでいます。協力講座として医学、理学、薬学、工学、生命科学、人間・環境学の各研究科の大学院教育及び全学共通教育を行うとともに、学内外に向けた講演会、シンポジウム、研究所進学説明会を開催し、日々研究室で行われている研究を、中高生や社会一般の方々に分かりやすく紹介しています。
また、産官学連携を積極的に推進し、特許等の知的財産の創出とライセンシングを通じて研究成果の実用化を推進しています。
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