宇宙線研究所は1950年に乗鞍岳に建てられた宇宙線観測用の「朝日の小屋」に起源を持ちます。53年に東京大学宇宙線観測所となり、76年に宇宙線研究所となりました。スペイン・カナリア諸島に2019年4月に設立された「カナリア高エネルギー宇宙物理観測研究施設」を加え、現在6つの観測施設・センターと3つの研究部門があります。本研究所は国際共同利用・共同研究拠点として、宇宙粒子線を研究手段として動的な宇宙を解明するとともに、加速器物理の伝統的手段とは異なる方法で、素粒子物理のフロンティアを開拓する研究を行っています。
スーパーカミオカンデに続く次世代のハイパーカミオカンデ計画を進めており、2027年から観測開始を予定しています。超大型地下ニュートリノ観測装置とJ-PARC加速器ニュートリノビームの高度化により、ニュートリノのCP対称性の破れ(ニュートリノ・反ニュートリノの性質の違い)の発見や、超新星爆発ニュートリノの観測、陽子崩壊の発見などを通じた、宇宙の進化史や素粒子の統一理論の解明を目指しています。
岐阜県飛騨市に完成した日本唯一の大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」は、2020年2月に重力波の観測に向けた運転を始めました。今後さらに感度を高める改良を行い、米国のLIGO、欧州のVirgoとともに国際的な重力波観測ネットワークの構築に貢献していきたいと考えています。
海外では、南北アメリカ大陸やヨーロッパ、チベットなど数カ所で、宇宙線やガンマ線を観測するための国際共同研究プロジェクトが進められています。スペイン・カナリア諸島に「チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)」実験の大口径望遠鏡1号基に続き、2-4号基の建設が進んでいます。2021年にはチベット実験で、宇宙線の陽子を1PeVまで加速するペバトロンが銀河系内にあったことを示すガンマ線放射が発見され、大きな話題となりましたが、南半球のボリビアでもALPACA実験も装置の設置が本格化しており、銀河中心を含む広領域のペバトロン探索が期待されています。
毎年春と秋の2回、本研究所とカブリ数物連携宇宙研究機構とが合同で一般向けの講演会を開き、最新の研究トピックについて広く知ってもらい、対話する機会を設けています。秋には柏キャンパスの一般公開に合わせて、宇宙線に関する様々な研究成果の解説やイベントを企画しています。また、岐阜県飛騨市にある実験施設スーパーカミオカンデでは、毎年約3000人の見学者を受け入れ、最先端装置や研究の説明を行っています。2017年からは広報や寄附を目的として研究所のオリジナルグッズ販売を始め、スーパーカミオカンデのジグソーパズル2種類や、オリジナルマグカップなどが人気グッズとなっています。
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